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 芭蕉には、花芭蕉、実芭蕉、糸芭蕉の3つの種類があります。そのうち、糸芭蕉の繊維から織られた織物が、

 昔から沖縄の人々に親しまれてきた芭蕉布です。
 
 芭蕉布の最大の特長は布地が粗いため、通風性が良いこと。

 さらりとし、真夏でも布が汗ばまず、冷んやりとした感じえお与えてくれます。
 
 着尺地には、生芭蕉、縞芭蕉、絣芭蕉の三種があります。

 生芭蕉は経緯糸とも芭蕉を用いて織った生地をいい、

 縞芭蕉には経緯糸とも芭蕉のものと、綿糸を交織したものとがあります。
 
 また絣芭蕉は芭蕉の中でも、特に厳選したものを使用。

 いずれも沖縄独特の琉球藍やテーチ木などの染料が使われます。

 また、天気が良いと糸が乾燥し切れやすくなるという微妙な糸加減のため、織りには機械は使用できず、全て手織り。

 厳しい忍耐と注意力を通して織り上げられる柄は、素朴で力強く、深い伝統の風情が感じられます。




<歴史>



 
材料である糸芭蕉は、苧麻(からむし)とともに自生していたという説と、

 中世に交易により南方から移植されたという説があり、明らかではありません。

 しかし、いずれにせよその歴史は古く13世紀頃から始まっており、

 江戸期には庶民の衣生活に欠くことのできないものとして普及していました。
 
 また戦前までは、沖縄全島で芭蕉布の生産が見られ、なかでも首里、喜如嘉、今帰仁が三大産地といわれていました。

 しかし戦後に入って急速に衰え、現在ではかつて上物の産地として知られた喜如嘉の村だけに、

 その伝統が受け継がれています。


<喜如嘉の手結>



 
芭蕉布の工程は全て手作業であり、厳しい忍耐と注意力が要求されます。

 中でも、喜如嘉の手結と呼ばれる絣括りは絵図を使わず、頭のなかに模様を計算して絣を括っていく方法です。

 多年の勘と経験を必要とし、容易に体得できるものではありません。
 
 こうした昔ながらの技法を踏襲して美しい芭蕉布の品質が今に伝えられているのです。

 芭蕉の上布一反分の繊維はほぼ二ヶ年をかけて育てられた糸芭蕉の茎を約40本ほど要します。


重要無形文化財 技術保持者      

平良 敏子氏

 
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